2021-01-01から1年間の記事一覧

広げた心にあなたが映写する

最初に靴を捨てた 知性で結ぶ紐のついた靴 あなたは帰れなくなって聞くだろう 残りの命は家で使う 本棚から引き出した風景 森の奥の古城 きっと異国の 脈絡はなし 水を差すと 月は欠けるから あなたに捧げる きっと異国の言葉 広げた心にあなたが映写する 新…

マグノリア、甘い花

付箋のついたページにはあなたがいる マグノリア 白い花 言い終えた言葉は幻と同じ あなたは夢と気づかぬ夢のようだった 霜を落とした春が風で花を散らす 最後にゆびさきから少女が抜け落ちると、わたしの体には女が滲んだ レースもビーズもなくしてしまった…

宇宙からは見えない

散歩の途中星を踏んだ風と坂をくだる落葉靴底でざっくりと赤い星々が壊れて粉々ひっそりとした秋暁空を這う木々はまるで巨大な葉脈で宇宙を指した枝々その先でゆれる葉はじきに落ちてくる星だ時々紅葉する地球宇宙からは見えない赤い星を壊して進む害虫とし…

華やいだ庭は楽園の延長に見える

華やいだ庭は楽園の延長に見える ぼくは几帳面に手入れを続けた 色は乱れ鮮やかさに女を例え花が咲く 成熟しては香る ユリは白 カンナは赤 大輪の菖蒲 娼婦 きみは 色が乱れ美しさに女を例え花は咲く ーーーしては喘ぐ きみは大入の娼婦 菖蒲 華やいだ庭は楽…

1頭の象+4人の人間=5頭の象

過去の私が残したメモにそうありました。おそらくですが、1頭の象+4頭の象では答えは5頭の象に、1人の人間+4頭の象では8頭の象、1人の人間+4人の人間では25人の人間になると思います。それが人間の素晴らしいところであり、罪深いところです。 平等とは何…

それでなんだっけ

指で押すと金が水に変わる ガシャン 吹きさらしの喉がひらく ひどく湿った体 この国の熱帯夜に 金で灯りを吊るす きみの話は聞いた どれもひどい話 誰とでも この夜を それでなんだっけ 抜け殻の部屋ではあの子がぐったりしている 服は浴槽の中 裸であの子は…

筆は真っ赤なバラを連ねて

傷んだ精神が首を伸ばして あなたを見ています 壁に絵がかかった 筆が真っ赤なバラを咲かせている こめかみのあたりに日ごと 思いを積んでいきます この熱狂的な倒錯の中にあっても あなたに話すこと わかりますか わかるまで咲かせます あなたがいないと死…

きみが好む言語で

見ていた夢の端 きみが好む言語、意味を持てない動物のようで 目から離れない それは星が燃える様に突然 手を繋いで 意味を抱えこんだ 集めずにはいられなかった 夢の右端 現れた字幕 きみの意味が鮮明になる 場面を置き去りに 目で追いかけるぼく の 理解が…

夜へおいで

夜においで 耳を切った 白いシャツの日に 胸に指を立てる どうか静かに 鼓動は足を止めて夜に 入る どうぞ安らかに 窓際の風鈴 耳が落ちた さよならに怯えることもない 犯している中にだって風は 吹いていて 硝子の朝顔 静寂の中で女を掴んでいる 白いシャツ…

もしかしてずっと寂しかった?

七月が焦げついてひどい香り、そこら中で夏は服を脱いでぼくはそれに火をつけて回る、燃える路上、裸足のやつから死ぬというのは80年代の発想さ、金持ちを殴って靴を奪うのは紳士とは言えないね、紳士的に行こう、時刻は2021年xx、こんなのアンタに予想でき…

倦怠する夜に

声を振ると星が舞った ひとこと、彼女が口を開けばひとつ 目の前でひとつ、鼻の先でまたひとつ、瞬く うっとりときて 相槌で拾い集めている彼女の ーーを 目でひとつ、鼻でまたひとつ、唇、粘膜でもうひとつ、深く 受け取って肺の中 星空が 肺の中に星空が広…

きみの体に太陽の指紋

乱暴になっていく欲を制止すると花が咲く。爪で咲いて、唇で咲いて、胸で咲く。ここはパリじゃない、けれども、太陽は窓を叩く。鍵穴を抜ける風、それが開いていく。壁紙を撫でるカーテン、いちいち愛してなどいられない。爪で言って、唇で言って、胸で言う…

死よりも確かに、きみを迎えに

放った矢できみの居場所がわかった 宇宙から空が落ちてくる 矢が夜を砕いて きらめいた その音 夜が砕ける 音 が手紙よりも確かに きみの居場所を教えている 帆は風の中を進む 砂でできた猿 砂漠では猿が暮らしていて ぼくの暮らしにはきみが 冬には手袋が …

楽園のそれ、病床のそれ

指の間で時代が脈を打って すぐに良くなる 肩が揺れる 「我慢できない?」 踊っていってね、と首を掴まれてもう 我慢できない 末端まで押し流されていく、渦巻く、血がめぐって踊りだす 腹の底から上がってくる 音楽を知っている 「死ぬほどいいって?」 走…

人類が最後に描く一枚

朝 部屋の隅が光で削れている 窓の近く そこにあなたの下着が落ちている 昨夜からずっとそこで息をして眠っている 美術館の最後の部屋にある額縁 ひっそりと手を振る果物にあなたの下着は似ている 手を伸ばす どうしても欲しい 〝赤いリンゴ〟 人類が最初に…

夢の間で他人だった

夏の間は他人だった なのにきみ あのように喜んだりしてはしたない 肩に冬がつもる 踏切 点滅 またこんど 鼓膜にぶつかる〝帰りたくない〟 事故にあったようなもの 見下ろした顔の中 まつげの先ではチリチリと結晶がゆれている きれい 冬の重みにみぞおちが…

体を脱いで宇宙へ出かける

正気が指を鳴らす はぐれないようひっきりなしに 時刻ちょうどに渋谷 ビルの上にはパラシュートを背負った音楽が整列している Mは言った「アリじゃあるまいし」 たっぷりの砂糖をまぶした煙で肺をいっぱいにして さっきまで遠くにいた 体を脱いで宇宙へ出か…

きみの髪は湿った詩集の匂い

時限性の要求 あいしてねあいしてね 胸のピンが飛んだ 「あいしてる」 きみが爆発する ぼくの中で自殺するみたいに くれなきゃ死んじゃう!なんて きみの髪は湿った詩集の匂い 泣いたり死んだり いちいちロマンティック 胸のホックが外れた くれなきゃ死んじ…

11:42 a.m.

かかとが降りた先 ネジを巻いた街が動き出す 昨夜は楽しかった ぼくら、指を切ろう 血が流れるような誓い 朽ちるまでランチ 裸のままランチを ぼくらほとんど楽しくなって ランチボックスにサンドイッチ 昨夜はごめんよ きみは素敵だ男が列を成す まるでハー…

夜にサーカスが灯る

夜にサーカスが灯る 橋の向こう 見慣れた街を照らす幻のような光 あなたがこの貧しい部屋で服を脱いだとき 堰を切ったように願いが生まれた 窓の中にいる二人 鞭打つ夜 合図で鼻をあげる象 あなたが火をつけると飛びあがるライオン よくしなう 堰を切った二…