三月

3/1

ねえねえ、

3/2

午前

八月 夏の日差しの中に きみへの言葉を残した 次の八月にはどうぞ 封を切って しまっておいた言葉を聴いて かざした指の間 影として光として届く 宛名はなくとも届く 八月 夏の日差しの中 光として私として きみへ

午後

思考、いつもと違う場所にいる。

3/3

私へ。1の隣が2なら、2の隣は3だね?3の隣が8になるとき、1の隣は2のような〝それ〟を見つけてきて。ちゃんと見つけて、私を喜ばせて。

3/4

午前

〝思考する〟はクッキーを作るイメージ。材料、道具、手順、それはいいとして、出来上がったクッキーは全て同じ味だが、その形によって〝より意味を持つ〟ということ。「クッキー」が「このクッキーは」になる。その意味と、その意味がクッキーに与える印象の変化を見る。基本的に何でもそこを見て、そこを愛す。

その〝部屋〟では人々が十字を切る。そういう話。

午後

彼の頭の中、目に見える宇宙。目を閉じると見える、見えるはずがないのに映る。宇宙船の窓から宇宙へ、手を振る私に、彼が驚いて笑う。そういう夢を見る。

今夜

ゆったりとした知性。

3/5

無くしてしまった過去の日記の再構築をします。パーツはおそらく「宵にコンソメの香り 良い香り 街の切れ目 きみはボウルを手に月を見ている ずっと待っている ぼくはそこへスープを注いで 月はボウルへ落ちた 瞳に月を映して 望めば何でも手に入る 瞳で月を揺らして ぼくはそこへ愛を注いでいる 夜寝にコンソメの香り 良い香り」こんな感じ。

以下、記憶の再構築

街の切れ目 きみはボウルを手に月を見ている ぼくはそこへ金色のスープをそそいで 宵にコンソメの香り 良い香り 美しい人 望めばなんでも手に入る 瞳で月を誘って 恐ろしい人 夜に目配せ もうじき月は落ちてくる 瞳で月を揺らして 街の切れ目 この夜 ボウルに浮かぶ月 ぼくはきみへこの愛をそそいでいる 夜寝にコンソメの香り 好い香り

なぜきちんと日記を残しておかない?と思ったが、私はいつも「大事なことなら忘れないはずだ、忘れても思い出せるはずだ」と考えるんだった。そして上記の通り、記憶は再構築された。細部は異なるだろうが、それは問題にはならない。だって感情なんだもの。〝今〟を含んでより豊かになったと考える。変わってしまったのではない、より豊かに、そう思う。

もともと「コンソメ」とは、仏語で「完成された」という意味で、中世から見られるようになった。

後になって〝こういうの〟に気づく。私は喜んでしまう。今、気づいたということは、今、完成されたということ。はじめから〝そういう約束〟だった。無くすことも重要なパーツの一つだった。

どこかに星もいた気がする。星のパーツ「瞳に星を集めて」

記憶が溢れて、パーツが集まる「明かりの消えた路上」

今夜

何度も確認してはいけない、好意は理論ではないのだから。覚えた。

3/6

肉体的な繋がりがなくても不足なく愛し合っている(という感覚がある)ので、ちょっと肉体をどうするか難しくなってしまったな。

蛇口の下にグラスを用意してハンドルを回せば、グラスの外側を濡らすことなく水をそそぐことが出来る。すでに蛇口から水が流れている状態で〝グラスの外側を濡らすことなく〟水をそそぐには「どうすればいい?」という話で。

〝グラスの外側を濡らすことなく〟なぜだろう。

3/7

夢を見た。朝のはじめに星の停留所がある。星が眠るベンチ、からだを起こして〝夜はここまで〟星はそう教えてくれた。時刻表、始発17:30、19:19、20:20、21:21と続いて、そのあとに一つ、ずいぶんと遅い星がある。深夜3:30「私が眠る時間だ」そういう夢だった。

3/8

新しい傘を持っている。雨を待っている。

私の話した言葉を、あなたが全て忘れてしまったとしても、「あの星だけ、なんだか青く見える」そういうものだ。全てを忘れてしまっても、なぜだか、「あの星だけ、なんだか」

〝特別に愛する〟について、この後に続く文章に映す。私はこの文章に〝特別な愛〟を映すために「括弧、句読点、ひらがな、カタカナ、漢字」を〝自身で選ぶこと〟にする。そうすることで、私の愛を示そうと思う。全体を意識し、括弧の位置、句読点の位置、それから漢字とひらがなのバランスを整える。ここで止まって、ここでは止まらないで、私を聴かせるために打つ、私と話しているみたい?私のリズムを感じる?太陽と書けば日が差してくる、雨と書けば傘が開き、止めば空に虹がかかる、あなたのために。伝わる?あなたは文章の中で見上げることになる、私が虹と書いたから。虹という文字に色なんてないのに、見える?あなたが私から創造するから。私がそれを望んでいるから。私の愛を感じる?〝特別に愛する〟あなたへ、I love you.

3/9

擦れば消えるようなものを意味と呼んでいるなんて。

終わりがない。

綴じたいだけ、綴じれば文学になる。脈がなくても必ず、私は〝意味〟を見つけてくる。

アンカットで。

3/10

あの人の翻訳、好き。良いイメージをくれるから。原文のページには蝶が飛んでいる?それなら翻訳のページにも蝶が必要だ。あの人の翻訳、言語そのものが生むイメージも訳している。ページの中に、見たこともない異国の蝶を飛ばして、その中に、この国の蝶を放つ。それは目を引く、だって母国語は〝意味のある言語〟だから。「安心していい」と言う。意味だけではないから、感動もきちんと訳しているから、だから〝安心していい〟と、この国の蝶を介して伝えている。

思考を言葉にするとき「思考そのものが生むイメージも言葉にしているか」そう自身に問うている。私は他人に〝パンケーキの作り方〟を知らせたいわけではない。パンケーキが焼ける匂いがする、あの高鳴り、それを〝言葉で正確に再現〟したい。その高鳴りを知らせたい。

3/11

二月の終わり頃からずっと、頭の中に白い砂浜があって、波があって、光があたって、ただ眺めている。きらきらゆれる海の音、耳の奥でずっと、眺めている。

3/12

サインよりノックの方が〝合図っぽい〟と思っている。ノックしてください。

三月、春の前、口が重い。

〝あの店のショートケーキ〟が好きなのは、いつ食べても同じ味、香り、同じ重さ、大きさ、同じ喜びをくれるからで、あの店のショートケーキを〝知っている〟から「あのケーキが食べたい、あのケーキが好き」そう思うことが出来るわけです。愛は評価ではなく結果です。結果には必ず原因があります。因果です。過去であり、記憶であり、相手の人間性、そして関係性です。それが私に「あの人に会いたい、あの人が好き」そう思わせるわけです。

そう思いたいわけです。

あやとりをしているのだから、二人とも「あやとりが好き」なのは当然のことで、私は、あなたが私のために〝流れ星〟を作る姿を見たいんだけど。

3/13

私の「全て許すよ」が嘘ではなかったことに感動している。私はあなたに本当のことを言っている。

私を見て。私の目を見ていて。あなたの不安が映るたびに瞬いて、それを閉じてあげるから。

3/14

恋しい。

3/15

そう耳元で口にする。

ねえ、どっちがいい?木が地面に影を落として、ねえ、どっちにする?この影は木のもの?それとも太陽のもの?私が見ているあなたは私のもの?それともあなたのもの?太陽がないと何もないのに、木がないと影はないの。私がいないと誰もいないのに、あなたがいないと私もいないの。ねえ、

3/16

何度も口にする言葉、身体。

3/17

思考は大胆に、言葉は冷静に。そして、態度は鷹揚に。

3/18

覗き込むと光で満ちてすぐに姿を変える。

例えば、海を見て「綺麗」だと感じたとき、それは単純な感動であって、感情であって、まだ完成していない。まだ海は綺麗ではない。綺麗だけでは満たされない。場所、時間、視点、重なり、実体。私の鼓動を利用して生まれる、この〝綺麗〟という感覚は一体、何を意味している?まだ海は、

理解などしなくても〝そのままで美しい〟から感情なんだってそれはそう。私はただ、感情で一つ、理解でもう一つ深く〝美しい〟が欲しい。綺麗に結ばれたリボン、自分で結ぶことが出来たら、素晴らしい。〝自分で〟そう出来たら、他人に結んであげることも、教えてあげることも出来る。美しい。

3/19

私の犬、愛してる。

3/20

同じ物語を、別の言葉で。

3/21

美しい構造、世界を〝理解する〟完璧な錯覚と、答えのない問い。おはよう、新しい朝食、パンを〝理想とする〟完璧な欲望と、私の焼ける匂い。熱を与えると膨らんで〝その性質〟があなたの鼻先をくすぐる、いつもこの香り、愛の焼ける匂い。だって、熱を与えないと私は〝愛〟にならないから。

その椅子に座って、もうパンが焼ける。

占いのお姉さんから「11室乙女座、太陽の理想主義が強い。世界平和が好き。それを魚座木星で受け止めている。12室天秤座、金星(ライジングスター)が魚座に向かって、木星を強化している」と教えてもらった。詳しいことはわからないが、〝木星を強化している〟この構造、大変に私らしい。

吉星の中でも「木星」は「グレート・ベネフィック」と言われる大吉星です。木星は幸運を表す惑星で、繁栄、発展、成功をもたらします。

私の興味は常に0にある。0を明確にするために1を生む、1で0を〝より0〟とすること。この0が〝何であるか〟理解すること。ところでこの1だが、1になるなら100にも1000にもなる。「そうなるから、そうする」という話で、〝木星を強化している〟はこの構造と同じ、私の興味はつまり

私が〝より私〟になることで幸運が強化されただけで、私が幸運であるかなんてどうでもいい話で。

3/22

彼の骨、好き。体も好き。私を押し返して逃げ回る、骨と体。

私があなたを欲しがるせいで、あなたは嫌というほど自分を持つ羽目に。〝持っていないもの〟を、他人にあげることは出来ない。あなたはどれくらいあなたを持っている?それで、それを全部、私にくれる?

3/23

神様を待たずに運命を描くと時々〝もう一つのモチーフ〟を持って神様がやって来る。大抵の場合、それは愛と呼ばれる。

もう一つの〝それ〟を描こうとしないこと。神様が運命に光を向けると〝もう一つのモチーフ〟が影として落ちる。神様が光を向けたくなるような、そんな運命を

運命で一つ、神様で二つ、愛で全て、手にする。

単純な構造、複雑な伝達、彼の愛について。

〝グラスに氷を入れてコーラをそそぐとコーラはよく冷えて美味しくなる〟ここでは、これを彼の愛とする。単純で美しい。彼はグラスと氷とコーラを持っている。彼は聞く「何か飲む?」私は答える「飲む」おそらく彼は、誰にでもそう聞くことが出来る。彼自身の献身を以てそう。彼は私の前にグラスを置く、コーラを開け、ふと手が止まる。

氷はどうしよう?おそらく彼女は喉が渇いていて、コーラも嫌いではなくて、僕の申し出を受け入れて。それで、氷は?聞けば良かったな。氷を入れなければグラスにたくさんのコーラをそそげる?でもよく冷えたコーラが好きだったら?僕は〝グラスに氷を入れてコーラをそそぐとコーラはよく冷えて美味しくなる〟それを知っているんだけど。でもそれも僕の思い込みかも。それで、氷は?

彼は聞く「寒くない?」複雑な問い。これが彼自身の献身を超えた愛であると私は考える。「寒くない?」彼は示した〝グラスに氷を入れてコーラをそそぐとコーラはよく冷えて美味しくなる〟と。私は答える「寒くない、氷ってある?」

3/24

私の性質があなたを壊してしまうとしても、私は私をあなたに見せたい。だから〝私について〟その全てをあなたに話している。私を知れば、私を避けることも、愛することも出来る。自由に。あなたはあなたを私から守って。絶対に壊されないように守って。それで、私は、あなたを絶対に壊すから。

これは日記ではなく暗示。

月は地球に落ちながら地球の周りを回り続けている。落ちては来ないけれど、落ち続けている。あなたの話をしている、あなたと私の話。ところでなんだか、月が綺麗ですね。

これは日記ではなく啓示。

3/25

意味と待ち合わせをしている。

3/26

言葉から溢れた場所でキスをする。

ページがめくれる音がする。紙が流れる音、離れる時、重なる時の音。あなたからその音がする。髪を撫でて良い?流れる指、重なる唇、耳から離れないその音。

3/27

あの人の身体、睡蓮の庭に浮かべたい。耳を沈めて、胸が呼吸する音を聴いて。

天使に階級があるの、どうしようもなく〝人間の創造〟でニコニコしてしまう。

27/28

あなたが言うように、子供の愛なの。綺麗な羽をもいだりする。まだ善悪もない無垢な愛と、その残忍性をあなたに。

3/28

子供の頃、トンボや蝶の羽を片側だけもいでいた。花弁みたいに。死なせたいわけではない。やがて死ぬんだろうけど。奪いたいだけ、〝その象徴〟を奪いたいだけ。二度と飛ばないで。

そこに思想などない、鼓動がある。身体中が一つの心臓のように強く、脈打つ。私自身が鼓動になる。

好き、大好き、愛してる、結婚しよう?

彼にたいしてよく心を開いていると思うが、考えてみれば、私にとって私自身の心はどこか他人事のようなところがあって、つまり、この先でまた別の〝何か〟を彼にたいして開く必要があるのだと思う。その〝何か〟とはなんだろうか。動物たちは人間に聞き取れない音を聞いている。私が開いている心は〝人間が聞き取れる心〟であって、つまり

私よりあなたの方が上手く聴きそうだ。あなたは耳が良い。言葉をそれぞれの思想として、心として、心を耳で聴く。

私の犬、何度も振り返って〝ちゃんとついて来てる?迷子になるよ?〟してくれる。何度も私を確認してる。ちゃんといるよ、愛してる。

3/29

ゾウと、絵と、ゾウの絵を描く私と、ゾウの絵を描く私を見ているゾウ。私はゾウが好き、私はゾウを見つけた。私は絵を描くことも好き、私はゾウの前にキャンバスを立てた。ゾウが好き、絵が好き、だから〝ゾウの絵を描くこと〟が、ゾウよりも絵よりも〝特別なこと〟になってしまう。ゾウは私を見ている。私は完成した〝この特別な絵〟を愛として、それをゾウに見せることが〝全て〟だと思い込んでいた。そこで〝この特別な愛〟が完成するのだと。絵を見てくれたらわかる。それは今でもそうで、絵を見れば全てわかるはずだ。絵を見れば、絵が、絵は、絵さえあればーーーーだけどゾウは私を見ている、絵はまだ完成していない、私を見ている。私はゾウに何か言うべきだ。挨拶でも説明でもなく「愛している」よりも何か、確かな言葉を。絵を見なくてもわかる、まだ、それしかわかっていない。

恋愛が好きなんでしょ?って言うけど、映画が好きな人には特別な一本があって、音楽が好きな人には特別な一曲が、私は人間だけど私で、恋愛が好きだとしても、好きだからこそ、特別な一人がいるはずでしょ。

それが君だとして、私は君の名前を〝特別な一人〟にあげるわけなんだけど、例えばね、例えばだよ?君も同じように私の名前を〝特別な一人〟にあげたとして、それは全く同じ話なのに、同じ曲なのに、別の表題であって、なんかそれってすごく、いいよね。

3/30

メモ

穴に糸を通すイメージ 数珠繋ぎ 穴は〝それら〟のどこにある? どの位置にある? 均等ではない 一つの共通点 不平等の中にある唯一の平等 「穴があること」 繋がなければ穴を〝確実なもの〟とすることはできないが、繋ぐことで不平等は〝明確なもの〟となる それらの大きさ 比較 ひと目でわかる 個性 一つの共通点 唯一の平等 真理について

例えば、全ての人間にリンゴが与えられたとする。大きなリンゴ、小さなリンゴ、赤いリンゴ、青いリンゴ、甘いリンゴ、苦いリンゴ、新しいリンゴ、古い、腐ったリンゴ。どのリンゴを与えられたとしても〝リンゴが与えられた〟という事実だけは平等だ。不平等の中にある唯一の平等。平等とは何だろうか、自然だって同じように〝甘くて美味しいリンゴ〟を作れるわけではない。人間は自然には出来ない〝全てのリンゴが甘くて美味しい世界〟を作ろうとしているのだろうか。どれを与えられても同じ、どれを齧っても同じように甘い、自然には出来ない不自然な世界、美しく反する世界。

絵のリンゴ、色のリンゴ、文字の、言語の、概念としてのリンゴはどうだろう。上記の〝どのリンゴ〟に含んでも問題ないだろうか。

例えば、あなたがイチョウの木だとする。秋の頃、葉は光のように紅葉し、辺り一面を金色に染めた。私はその様子を見て思う「この素晴らしい光景を〝そのまま〟私のものにしたい」私はイチョウの木の周りに木を立て始めた。雨の日も、風の日も、雷、酷い嵐の日にも、ねえ、どうして火が降ってくるの?私は絶え間なくそれを続けた。今、イチョウの木は森の中にある。イチョウの木はイチョウの木のまま、あなたはあなたのまま〝そのまま〟あなただけのもの。だけど、この森は私の森で、私のもので、イチョウの木は森の中にある。ねえ、この森はとても

3/31

この美しい物語を完璧なものにするために〝あなたの性質〟を利用する。愛を以って。

どうして逃げ回るの?って考えていたんだけど、私の愛と策が同じだけの熱を持っているせい?今どちらの熱であなたに触れているか、わかる?