2022-01-01から1年間の記事一覧
とのこと。
隣の椅子に座った子供がガリガリと煎餅を噛み砕く音を聞いていた、病院にて。生き物の音がする、神聖な響き、耳の奥にある部屋はまるで「石で出来た教会」天井で返ってくる賛美歌、口から離れた歌は二度と戻らず、こんなところにまで神様。椅子と椅子、私と…
「すごい支配欲だ。でもさ、君が100、相手が50だった時、支配では100が上限になってしまう。協力であれば、それが150にも200にもなる。素晴らしいと思わない?」と友人。彼の主張は正しい。私の100より、相手の50より、二人の150、200だ。それが〝より良い結…
私は私が気にならない。私は存在している、他に何もない。私は「他人に評価させてはいけない自分」を持っている。それが私をあらゆるものから守り、自由にしてくれるはずだと、幼い私が考えたからだ。そうして幼い私が用意しておいてくれた、今ここで、話し…
私は自身の中にそれがあることに気づいた。それに気づいた日から今も夢中だ。私は私の女を使いたいと思っていた。一刻も早く。幼い頃からずっと、その日を心待ちにしていた。 今も夢の中 少女に「それ」を暗示させること。大人を誘惑し、それがここにあると…
その程度のもので私の何かが変わるだなんて思わないで欲しい。心配いらないよ、気にしないで。だからもっとくつろいだ雰囲気で。 その種はやがて青い花を咲かせる。良質な土、太陽の光、毎日の水やりに「綺麗に咲いて見せてね」という〝慈愛に満ちた〟声かけ…
迫害されてきた人々が、また別の人々を迫害する。かけっこで一番になれば金色のメダルがもらえる。メダルがもらえなければ「なぜ私たちの時にはもらえないの?」となるだろう。迫害されてきた人々が、また別の人々を。それが金色のメダルだからだ。一番の人…
「お母さん綺麗だね」と言われて生きてきた。そう言われるたびに、私は、何とも言えない気分に。自分の大切なものを褒められて嬉しい。それから「それで、私は」との間。 父ははっきりと言った。お母さんのように綺麗な女の子が生まれてくると思ったのに「そ…
「私のどこが好き?」「歯並びが良いところ」いつも同じ答え。 ねえ、 あなたの歯って酷い 彼の歯並びが好きだった。彼自身がそれに劣等感を抱いていることも、そのせいで〝歯並びが良い女が好き〟であることも、全て。その全てが私の快楽だった。四六時中、…
「基本的に人間に物欲はないんだよ。資本主義の社会に欲しいと思わされているだけで、物欲なんて幻想だよ」と友人。 私と彼の決定的な違いだ。私に言わせれば「人間に物欲はない」こちらが幻想だ。私たちは社会の中で生きている。私たちは生まれてからこれま…
簡単であること、単純であること。私が重視していることだ。一目で理解したい。一歩で侵攻し、たった一発で制圧したい。 「あなたは他人どころか、自分にも興味がないんだよ」と言われ、頷いた。私は考えることを続けられるのであれば、これが誰の精神でも、…
それが人間です 「出現は〝自然→人間→神〟と推測されるが、人間の出現と共に神(概念)も出現。これにより絶対的と思われた順序も入れ替えが可能に。〝神→自然→人間〟人々は神の踏み台。過去の変更も可能。時間なんてものは結局、人間が作り出した概念に過ぎ…
骨、それから靴と衣類の一部が発見されたとテレビから聞こえてきて、私は「肉は」と思った。そしてしばらくの間、血が沸くような感動が続いた。この手の感動を口にしてはいけない、そうだね?だって、まずは、他人の不幸を自分のことのように悲しまないとい…
キスが苦手だ。キスのことはパセリやクレソンのように思っている。ドリアの上のパセリ、ステーキの上のクレソン。全体の完成度を上げるために、それらは絶対に必要であると私自身も認識しているが、それらを好むかどうかはまた別の話。私はパセリもクレソン…
他人から「大袈裟だよ」と笑われる。話を誇張していると。要は嘘っぽいのだ。私の全てが。それはそうだろう。私が他人に話すことは大抵、嘘なのだから。 単純な話 「赤が好き」と言う。赤が好きの後ろには当然「青も好き、緑も好き」がある。赤だけを好きな…
母は私を色情狂と呼んだ。それから「お父さんには言えない」あなたがそのような人間であることを「お父さんには絶対に言わないで」と言った。杞憂であった。母の死後、私は堰を切ったように自身がどのような人間であるかを父に話して聞かせたが、彼の反応は…
打った点を繋ぐと星は現れる 線を成すのがきみ 日は落ちて東の空から描かれる宇宙 頬を撫でて通りすぎる すぐに逃げていくような時間 眠る体をゆすってきみは願いを実現する 眠りの果てから救いだされた 今夜 彼女は言った「星を撃つと現れる」 銃を抜くのは…
きみが星を指さす ぼくの瞳孔はゆっくりと開いて それはきみを一人、泊められるだけの広さにまで 広がって もう喉はうっとりと甘い ベッドとあたたかいミルク それから きみがいつか出て行くための窓まで 窓際に花 かなしい窓にならないように花を ぼくの口…
雲は身震いして消えた 閉じた傘の先がまだそれを続けていて路上をコツコツたたく 雨 ゆきずりの女を悪く言うのは「おかあさん助けて」であって罪はない ないけれども 針を変えるくらいの理性は欲しい 汚れた靴下を脱がせてくれる程度のやさしさ 朝食のオレン…
歌っているような声 鳥は夜明けに森の背中をゆすっている 眠りがあける 瞼で朝をあける 知っているような歌が 澄んだ空気をゆすってこの遠い窓にまで 雨は土の上に(落ちる) 木は葉の上で虫たちを休ませている 今、花が散って 一つの時代が眠りについた 歌…