楽園のそれ、病床のそれ

指の間で時代が脈を打って

すぐに良くなる

肩が揺れる

「我慢できない?」

踊っていってね、と首を掴まれてもう

我慢できない

末端まで押し流されていく、渦巻く、血がめぐって踊りだす

腹の底から上がってくる

音楽を知っている

「死ぬほどいいって?」

走りがちになる心拍

あんたはゲラゲラ笑ってxxは現代に生まれたただ一つの音楽だと言った

それから「どうしてxxは死なないんだろうね、xxが生きているうちは話にならないよ、あいつの音楽はヒスった女みたいだ、xxが死んで、初めてあいつの音楽は完全なものになる、あいつの代わりに完全な音楽になる、代わりにブチ込んでやりたいくらいだね」と額を指さした

あんたの言い分はまるで80年代のそれ、病床のそれ

ねえ

生の最も重要なエレメントは変化であって、変わっていくことであって、変わってしまったことを嘆くことであって

だから死は尊い、もう思想を変えたりしないから尊い、口先で女を口説いて、その腕をもいだりしないから尊い

「ここに死があって、だからここに生っていう影が現れるわけじゃない?」

あんたの後ろで大きく影が揺れる、にじんだインクの縁みたいにぼんやりしている

もう完全に病床のそれ

それぞれの時代に、それぞれの生はあって、死のベッドに、それぞれが横たわって消えた

ゆっくりおやすみ

指の間で時代が熱を持って

結末まで押し流されていく、うずくまる、血が騒いでもう

「じゃあ何だろうね、光は、あのうるさいくらいに饒舌な光は」

踊りだす

すぐに良くなる